CogNano Tech Blog

バイオ情報をヘルスコントロールへと繋ぐ

ITエンジニアがバイオの会社に挑戦する話(出会い編)

タイトルでいうITエンジニアであり、COGNANO技術顧問のまつもとりーです。前回のエントリでCOGNANO社長である伊村さんからパスを頂いたので、僕と伊村さんの出会い、そして、ITエンジニアであり、情報学の研究者である僕が、なぜこのバイオ領域を専門とする会社のCOGNANOで一緒に仕事をするに至ったかについて、出会い編を簡単に書いてみようと思います。COGNANOのホームページでの会社紹介は以下のようになっています。

COGNANOは、コンピュータ支援型創薬を目指すベンチャー企業です。自社のアルパカから得られるVHHのビッグデータをもとに、新たな創薬プラットフォームを構築します。私たちの目標は、創薬設計・開発の最適化です。

COGNANOからの連絡

今から1年半前ぐらいでしょうか、ある時一通のメールが来て、そのメールは、バイオをネタにしたビジネスを考えていて、ITを使って応用させたいから相談に乗って欲しい、というような内容でした。連絡をくださったCOGNANO社長の伊村さんは京都大学で医学の博士号を取得し、京大病院に拠点をおく医者でもあり医学研究者でもあって、グローバルに論文を沢山書いている方で、最初はなんとなく縁を感じたのでお話を聞くことにしました。

初めての打ち合わせでは実際のビジネスの話やそこでの現状の全体的な取り組みの話を聞いたのですが、今だから言える話ではありますが、やはりITや昨今のウェブ技術の専門では無い方が多かったためか、本当に手探りで、プロダクトを作った後の話が考慮されていなかったり、そもそもプロダクトで何をミッション・ビジョンにしているのか、チームとして継続的に変化に対応していくための体制などについてもほぼ考慮されておらず、実装方法も非常に変化に弱い固定的なものになっていました。

セキュリティについてもほとんど考慮されていませんでした。正直なところ、進んでいる話を一旦止めないといけない、そうじゃないと失敗する、あるいは、もっと大きな問題が起きるかもしれない、と思ったのを覚えています。

伊村さんのビジョンと人柄への共感

本来の僕であれば、部外者の僕が頑張って色々説明して止めるのもどうかと思いましたし、さすがにやれることがあまりないかもしれないということで、この段階でお話をお断りすることが多いのですが、伊村さんの話を聞いていると、伊村さん自身の中にある医療をパーソナル化していくビジョンの話や、それを実現するためのバイオ側のVHHデータに関するコア技術の圧倒的な技術力の高さ、何より、伊村さん自身の謙虚でわからないことをわからないとはっきり言いながら人に頼ることのできる人柄に少しずつ魅了されていきました。こういう人なら、ちゃんと説明すれば止めることについても理解してくれそうだという信頼にもなっていきました。

また、バイオに関する技術が、例えば研究としても世界トップレベルの成果を出している話(これについては僕は専門じゃないので詳細は省きます)や公開されている論文をみていく中で、これと情報技術を紐付けることができれば、とってもおもしろいことができるんじゃないかと少しずつ実感してきました。

そこで、もっと理解を深めるために、VHHを始めとしたバイオの技術も少しずつ勉強し始めました。

かつての自身の妄想が蘇る

ここで、僕が学んだVHHという、抗体を情報で表したり、その情報を物質化することができる技術や、VHH抗体のデータをある種ビッグデータとして大量に保持しているCOGNANOのコア技術にふれる中で、伊村さんが述べる生物を情報で捉えるというアプローチは、まさにかつて僕が大学生の頃に「生物と無生物のあいだ」などを読む中で、インターネット技術を生命の観点から解釈できるのではないかと日々考えていたこととも重なり合い、自分の中では専門でなかったバイオ技術側の知識が伊村さんによってどんどん補完され、夢が現実になりつつある実感を得たのでした。

 

blog.matsumoto-r.jp

 

また、2016年頃になって、自身のインターネットに関わる技術が妄想についてきたこともあり、生命の特徴に踏み込んでWebシステムを解釈するような研究発表もしてきました。

 

speakerdeck.com

 

こういったこれまでの僕の活動と伊村さんとのディスカッションがどんどんとリアルな話へと紐付いていき、バイオの専門家と情報の専門家によって、お互い踏み込めなかった領域の知識が補完され、どんどんと創発的に話が出来上がっていく体験に非常にワクワクさせられました。

なにより、僕が自分のブログを「人間とウェブの未来」というブログ名にしていることにも、15年たった今、創発的に繋がったことを認識したのでした。もうこれは、とにかく一緒にやっていくとめちゃくちゃ面白くなるぞ、と。

資金調達と事業の言語化、これからのCOGNANO

そこから、チームやプロダウトを継続的に開発し、サイクルを回し続けるために、ある種二人三脚で事業やプロダクトのミッション・ビジョン、さらには最終的に目指すコンセプトや事業の計画などをどんどん整理し、資金調達を行うための言語化やピッチ資料の作成、様々な会社とのディスカッションなどを行ってきました。バイオの分野として他の会社とお話することは初めてなので、色々と新鮮な雰囲気を味わいました。

そして、約1年ぐらいかかりましたが、プレシードとしての資金調達などがうまくいき始め、各種プロトタイプのデバイスができたり、

つるべーさんの多大なる協力のもとプロダクトに関連する機械学習を活用した研究開発の成果がではじめ、コア技術としての特許や論文の取り組みもどんどん進んでいます。そして、いよいよITに関わるプロダクトやチームづくりにも本腰を入れられるようになってきました。そして、今に至ります。

さいごに

以上が、僕と伊村さんの出会いとこれまでの取り組みの経緯です。書き始めるとどんどん書き始めてしまいますので、一旦はこのあたりにしておきたいと思います。これからは、より継続性のあるチーム作りや環境整備、採用なども始めていきますので、是非COGNANOに注目頂けると幸いです。また、COGNANOに関するお話が何かありましたら、社長の伊村さんや僕まつもとりーまでご連絡頂ければと思います。

本エントリを出会い編としたからには、今後も継続的にITエンジニアとしてバイオにどう関わっているかについて書いていきます。